アーカイブ2019年

  • その84:  【番外文化編】初詣の時期を前にした 神社参拝についての話題

    今回は令和元年の終わりを迎えるに当って、いつものITC系の話題で締めるこの欄の趣を少し変えて、最近友人との間でネットで交わした「神社参拝の方法」について触れたいと思います。令和2年を初詣で迎える方々の参考になれば幸いです。事の始まりは、ネットで掲載された次のような記事に対する友人(昭和世代)の疑問から始まりました。

    【きっかけとなった記事】2019年12月16日 President OnLine 掲載 「神社で柏手を打ってはいけない」納得の理由 --- 「二礼二拍手一礼」はウソだった (内容については当該記事参照)

    【この記事に関する友人の疑問】 二礼二拍手一礼は玉串奉奠のときの作法というのは納得が行く。でも神社でお参りするときに二礼二拍手一礼をする習慣は平成に入ってからというのは言い過ぎだと思う。個人的に、昭和の頃から神社でこれもやっていた記憶がある。そもそも出雲大社系の「二礼四拍手一礼」も、最近の習慣なのだろうか?

    因みに、神社の総本山である神社本庁のWebページには次のような説明が行われています(2019年12月)。参拝方法(詳細こちら) (この説明ページは、平成30年(2018年)12月5日の更新日付でした。)「神社での参拝方法は、二拝二拍手を基本としていますが、神社によっては特殊な拝礼方法を行っているところもあります。」と説明。「玉串拝礼」とは切り離して説明されている。

    【筆者の理解】友人の疑問をきっかけに、事の流れを東京国立博物館(上野)での情報探索などを踏まえての調査結果、流れとして理解できたのは次のようなことです。
  • (1)この礼式の話題は、昭和17年に内務省が作成し出版した「神社祭式行事作法」に始まる。それ以前は色んなやり方があったが、そこから選んで祭式の際の法律として定められた。主に神社内の礼法といえる。この内容を日本軍では取入れて実践したらしい。この出版本の内容は現在、国立図書館の電子ライブラリを通じて確認ができる。
    (2)この法律は昭和20年の敗戦後まもなく廃止された(昭和21年)。その後昭和23年(1948年)に、別途のものとして神社本庁が「神社祭式行事作法」というものを取り決めた。これは法律ではなく神社の礼式としたもの。ここに戦前の内容が取入れられた部分がある様子。二拝二拍手一拝作法はこの一つと考えられる。
    (3)筆者の想像が入るが、第二次世界大戦に出兵された方や家族、元々お寺の檀家ではなく神式で過ごす家庭では、この方式でお参り継続していたと考えられる。((ア)一昨年亡くなった筆者の伯父の家庭は神式で、葬儀もそれで行っている。(イ)先の筆者の友人(仙台出身)も、「小学校時代に祖父から『二礼二拍手一礼』と教わったので、昭和のときからこれを実践していたはず。と言いつつ、急いでいるときには片手で拝むだけでも良いとも聞いた気がする。」と言っている。)
    (4)一方、その後、この神社本庁の資料や、他の人の参拝法を見た一般の方(或いは出版社とか)がそのやり方を記事や本にして、神社お参りのノウハウとして広めたところがあると思われる(例として、2001年(平成15年)に出された「神社でヒーリング」(比企理恵著)ではこの礼式を参拝法として紹介している(但し合間に祝詞を入れている)。本の紹介には、当該本が当時フジTVで紹介されたとある。)またその他の神社紹介本でも、この礼法を参拝法として紹介しているものがある。そこでは、出典として昭和23年の「神社祭式行事作法」を記していた。
    (5)経緯として、その後のマニュアル好きとも言える若い世代がそのやり方が正しい方法だとして採用し今に至るのではないか。最近神社で目立つのはそういう所と想定される。一方で神社本庁も一般への広がり方を見て、Webページに正しいお参りの仕方として比較的最近掲示をした。各神社の掲示もその方針に従っていると思われる。従って、この参拝方法は絶対的なものというよりは、一つの(本来、神職向けだった)標準のやり方と考えることができる。
    (6)一方、以前から神社によっては他の方式があり、神社本庁でもその方式も認めている。(例:出雲系神社の、四拍が入る方式(出雲大社や宇佐神宮方式)。この参拝方法は、延喜式(平安時代)に特別な祭礼時の方法として記述がある)

    結論として考えれば、現在多くの人が参拝時に行うようになった「二拝二拍手一拝」作法は、記事にあるようおに平成から始まったというのは言い過ぎである。それ以前からこのやり方が正しいとして実行していた人達があるのは事実。但し、現在のように広まってきたのは、その後の参拝ノウハウ世代が増えたからだといえる。つまり、一般の人が二礼二拍手一礼の方式を取るのは、必ずしもその必要はない。更に、神社として境内や配布物で、その掲示を最近するようになったこともあり、そうした方法を取る人々が増えたとも考えられる。
  • 筆者の考えでは、余り礼式作法に拘らず、時と場所を選ぶ形で、それぞれのやり方を踏まえて各個人が神と向き合うというのが本来のお参りの仕方とするのが良いと言いたいです。勿論「二礼二拍手一礼」方式を取ることでも良いでしょう。(個人的には、俄で参加する人まで長い初詣の行列でこのやり方を行うのは、待ち時間がより長くなる原因を作る可能性を気にしたいです。)   (先頭に戻る)

  • その83:  データマネジメントとデータガバナンスへの取組みの大切さ

    いよいよ今年も残り2週間余りとなり、慌ただしい毎日を過ごされている方も少なくないと思います。筆者も先週は4度の忘年会などの集まりに参加し、会を終えた後も出てくる挨拶は「良いお年をお迎え下さい」というような形で、年末感を一層感じさせる時期となりました。これで新年を迎えると東京オリンピックの話題でマスコミを中心とした雰囲気が溢れることでしょう。さて今回は、先週参加したデータマネジメント協会日本支部(DAMA Japan Chapter)の分科会での話題を踏まえたものとします。
  • この分科会(2つ)では、DMBOK(Dama International)の発行するデータマネジメント知識体系(DMBOK)を参照しながら、データマネジメントそのものと、データマネジメントの成熟度評価に関する話題を議論するのですが、その中でも「データガバナンス」の項目が中心的な位置付けを占めるものとなります。単純にガバナンス(統治)と言えば(言葉は難しそうですが)基本は企業の運営が目標に沿って効果的で、効率性を保ちながら如何に組織としての活動体制を維持し日々運営できるようにするかの取組みである、と筆者は捉えています。企業の利用できるデータを活用するという意味で、「データマネジメント」においては「データガバナンス」という考え方が大切であるということがポイントです。このデータガバナンスの詳細については、先に上げたDMBOKなどの資料を見て頂くことにして、ここではその考え方の必要性を辿ることが今回記事の目的です。

    まず、データを活用した企業運営を目標にするためには(最近の言葉で言えば「データ駆動型企業」)、頼りとするデータが出所のハッッキリとした「信頼性が高く」、データ品質に関する「精度が高い」ということが必要とされるということです。データの質に信用が置けなければ、進もうとする方向が本来の物とは全く異なってしまう可能性があるということです。また、複数の担当者(或いは部門)で見ているデータが異なった状況を示しているということになれば、意見や活動の方針に一致点を見出すことが困難になりますし、互いに自分の所の意見が正しいという主張のぶつかり合いに陥ってしまうということに成りかねません。互いの共通理解と信頼のおける情報を元にした企業活動こそ重要であるということです。

    また、最近流行のデータサイエンスの分野においても、その分析や自動化への応用というのは、元にするデータが信頼性が高いことが大前提となっていることは言うまでもありません。既に言い古された言葉では「Garbage in garbage out(ゴミから出るモノはゴミ)」といったことでしょう。そのために様々なリソース(人・モノ・金・時間)を費やしてでも、このデータガバナンスを実行する必要性があるという訳です。但しその優先度に応じて、どこまでリソースを費やすかは、経営的な判断になるということです。この点セキュリティ対策の話題に類似する点があります。

    データガバナンス実行の要点は「個人に頼り過ぎない」という点にあると筆者は考えています。組織としての観点から活動を統制するという意味です。何となく「日常的にうまくいっているから良いだろう」ということに頼っては危ういということ。気付いてからでは遅い、或いは事後対策を進めようとすると思いがけない費用や時間(労力)を費やさざるを得ない状況に陥るという意味です。そしてこういった事を日常的に統制可能とするためには、様々なツールやサービスを効果的に利用したいものです。結果的にそれが余分なコストを抑えることにもなります。
  • 特に様々な、規制や消費者の企業や商品・情報にたいする意識の変化、また人材の流動化の高まりといった社会風潮の流れを見れば、「個人に頼り過ぎない」データマネジメント環境の構築・維持ということが、企業活動の要点になってくるということでしょう。今回の筆者の結論です。こういったデータマネジメント活動に関して、ご相談や質問などがあれば、遠慮無く「お問合せ」フォームから筆者宛ご連絡下さい。    (先頭に戻る)

  • その82:  SNS系アプリの利用について考えたこと(雑感)

    先日、Yahoo!ジャパンとLINEの経営統合の話題が発表されましたが、多大な顧客ベースへのアプリ提供をビジネスとして行っている両者とはいえ、それまで競合として活動し経営の方向性も異なる会社が実質的に合併するには多くの困難が待ち受けているものと察します。今回はこの話がメインではなく、それらの会社も提供しているSNS(ソーシャルメディア)について近頃感じていることを話題にしたいと考えています(身近に使われるものとして、FacebookやInstagramなどをイメージして下さい)。

    これらのアプリは何らかの興味や、日頃の人間関係を元にしてネットワーク化された仮想のグループ社会の集合として構成されるネットワークを対象にしています。そしてそのグループ化を当てにして様々な営利企業がマーケティングなどの施策をビジネスとして提供しようという背景があるということです。このビジネス的な活用方法については今回は触れず、参加者が構成しているサークルに着目したいというのが今回のポイントです。
  • 基本的にはそのサークル(コミュニティ)に参加している(或いは潜在的に参加する可能性のある)人達の中で何らかのショートメッセージや画像情報、それから第三者の発信情報を紹介するといった目的で投稿が発生し、そのサークル内や候補者に共有するという形です。そしてそれを促進するアプリ側の仕掛けとして、所謂「いいね」とか「反応コメント」の追加を可能としているという具合です(また誕生日のお祝いメッセージを促進するような仕掛けもある)。しかし、その投稿情報が共有されている本当の範囲というのは、投稿者にも反応者にも正直なところハッキリとは分っていないのではないかと思います。またその投稿が相手に伝わるタイミングもそれほど明確ではないといえます。投稿者は、投稿と同時に繋がりのある人達に伝わっていると錯覚しているかもしれません。

    筆者も経験がありますが、自分の投稿内容に誰かからの反応が生まれることに嬉しさを感じるものです。それがネットワークを介して多人数の反応が出るほど刺激性が大きいといえるでしょう。そして他の人の投稿を見つけると、何らかの反応をして上げたくなるという心理も働く。或る意味機械的にする条件反応の要素が強いといえるかもしれません。勿論投稿内容を踏まえて考えた上での反応をする場合もあるので、全てが先のようなものばかりとはいえません(念のため)。筆者が感じたのは、一行のメッセージや風景画像などに「いいね」反応をする人達が結構多いなと感じた点です。必ずしも内容を理解した上での反応という訳ではないのだろうなと想像した次第です。こういった反応を得られるというのが、条件反射を産む刺激となるのが楽しくて、より刺激度の高い投稿を図らずも行ってしまうということもあり得る。時々ニュースとして取上げられる、アルバイト店員の過激な動画というのもこういった心理が悪い方向に働いてしまったためということも考えられます。
  • 筆者として気になったのは、余り意味を深く捉えることもなく反射的に行動することのきっかけを、こういったSNSアプリが産む可能性が気になったからだといえます。逆に真面目に考えた投稿が、その投稿者の意図に反して軽く扱われて、すぐに忘れ去られることにも繋がるのではないかとも考えます。従ってこういったメディアの利用法に関しては、利用者の細心の取組みとして考える必要があるのではないでしょうか。アップル社のスティーブ・ジョブスが、iPadやiPhoneを、その中毒的な危険性を理由に自分の子供達に利用することを禁じていたという話が伝わっているのも、一つの象徴的話題といえるでしょう。脚下照顧。
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  • その81:「マイナンバー 」はなぜ期待通りに使えないのか? 使える仕組み作りには、どうすべきなのか?

    「弁護士ドットコムニュース」2019年11月5日14時10分配信記事に「マイナンバーカード旧姓併記、200億円かけたのに『がっかり』 口座の旧姓使用は銀行次第」という記事に目が止まり、少し考えるところがあったため、今回はこれを話題にして議論します。

    詳細は元の記事を見て頂くことにして、冒頭の文だけを引用すると「住民票とマイナンバーカードに旧姓を併記できる制度が11月5日、スタートした。これは、政府が結婚後も仕事で旧姓使用する女性の活躍を推進する目的のため、地方自治体のシステム改修費など約200億円をかけて進めてきたもの。」と要約した形になっています。総務省の鳴り物入りで進められたはずの仕組みが、利用者の観点からは「全く使い物にならない」ということです。本来の「選択的夫婦別姓制度」という法的な事柄に関する話は、ここでは脇に置くことにして、ここでは「銀行口座を旧姓でも使えるようにして欲しい」という利用者の期待が容易に「銀行側のシステムで対応できない(ある銀行内調査で、対応するには数億円の費用がかかることが分った、という内容)」という話であったということです。

    筆者には、銀行側のシステムの柔軟性に関する話として映りました。社会状況や法律制度は元々変化するものであるのに対して、コンピュータシステムおよびそれを使っている銀行内業務側が柔軟に対応できる仕組みを採用できていないという意味です。その結果として「改修費用に現れる」ということです。もしかしたら数ある銀行の中には、こういった変更要求の際に、容易に対応できる仕組みを採用しているところがあるかもしれませんので、先の話題は「多くの銀行では」と断った方が正確な可能性があります。そういう一部の銀行にとっては「口座数を増やす」絶好の機会であるかもしれません(一律運行の方式を取る社会では、そういうことを表立ったアピールとはし難いのかもしれませんが)。
  • 何れにしても、システム作りにおいては、当初から社会的なルールや仕組みに関する変更があり得ることを前提にして計画を行うことが大切である理由付けになる「大きな根拠」の一例であると、筆者は考えます。後付けによる「できない表向き理由」はいくらでも作り出すことができます。しかし、何のための仕組み作りなのかを「戦略的に」考えることのできるリーダーの存在こそが、こういった社会問題に対する解決策への大きな要素になると筆者は考えます。そして、「データ」中心的な設計を始めからの施策として取込んでおく必要性があるということです。
  • 筆者が「データマネジメントへの早くからの取組み」の必要性を強調するのはそのためです。これは組織的なものとして行われるのがベストです。そういう視点を持って腹を据えて取組む経営者を応援します。    (先頭に戻る
  • その80:「 2025年の崖」問題に関する説明の質を考える

    今朝程(2019年10月24日)朝のラジオ番組を聞いていたところ、東京大学の名誉教授という方がIPA(情報処理推進機構)のや関連する報告などを紹介しながら「2025年の崖」といわれる問題について、一般の視聴者向けの説明をされていましたが、その内容を聴いていて、正直なところ筆者はかなりの違和感を感じたため、その内容についてメモを兼ねてこの欄に記載することにしました。

    まず、説明されていた内容を筆者なりに要約します。IPAによれば、情報処理技術者試験から過去数十年に渡って行われてきた「COBOL」という計算機言語の出題が取止めになり、その代わりに「PYTHON」という言語が出題されるようになった(ここで説明者は「PYTHON」を人工知能向けに特化した言語と紹介していましたが、それは必ずしも正しくはありません。昨今、その方面の利用として注目されていますが、別にそれに特化している訳ではないという点)。先のCOBOL言語は、長い間、金融機関を含めた多くの企業で使われ続けた言語であり、今回の報告(発表)も2025年の崖問題での社会的インパクトの大きな面の一つである。つまり、このCOBOLを理解する技術者がいなくなり、計算機上でのメンテナンス(修正・維持作業)をできる人がいなくなるということを意味している、という説明です。
  • この名誉教授は、官公庁に類する団体の報告や発表の内容を説明しただけであるが、その内容が必ずしも本当の原因を説明していないということに、筆者の違和感の元があるということです。つまり、計算機言語の種類が問題なのではなくて、実はその言語を利用して作成したプログラム、或いは作成の仕方(プログラミング)に問題が含まれている、つまり「内容」に関する本質的な話題なのだという点です。(説明者は恐らく技術的な細かい話には詳しくないため、そういった観点に踏み込んではおらず、発行された資料を元に説明しただけだと思われます。)仮に利用している計算機言語が例え「PYTHON」であったとしても、これまでの考え方の延長でプログラム作成をするならば、いずれ同じような社会問題に突き当たるはずだというのが、筆者のここでの論点です。

    或る意味無秩序に、計算機言語を利用して「プログラマ」の思いつきでプログラムを作成して、その内容がきちんと文書として残され(これを専門的には「メタデータ」と呼ぶ)、後の担当者にきちんと引き継げるようになっているかどうかというのが、大きな論点です。そしてプログラムも分かり易い形で作られているかどうかということも鍵になります。そして所謂「データ中心」的に設計されているかどうかということ。いずれにしても、プログラムの作成者だけが分っていれば良いということではなく、本当の意味の第三者に引継いでゆける状態でプログラム(アプリケーション)が作成されているかどうかということが鍵という訳です。それを筆者は広い意味で「プログラム作りの作法」と呼んでおきます。

    こういったことを含めた考え方が、広い意味での「データマネジメント」の取り扱う課題です。筆者がこれまで、幾度となく本欄でデータマネジメントについて記述してきたのは、そういう観点を踏まえた大切さを訴えたいからだということができます。しかし短期的経済原理からだけ見てしまうと、そういった中長期的な視点がおざなりにされ、後に残ったものが貧乏くじを引く結果になってしまうということです。経営者/マネジメントと言われる人達は、プラグラミングを知っている必要は全くありませんが、こういった人間の行動を踏まえたシステム作りの要点を押さえておく人達でなければならないというのが、コンピュータ、IT利用の世の中における最低の素養であると筆者は考えます。
  • 「継続は力なり」というコトワザがあります。通常は良い意味での教訓として利用されていると考えますが、力学的な意味合いを捉えて考えると、この「力」は良い意味での正方向にばかり働くのではなく、逆の「負」方向にも動くという面もあるのではないかと考えさせられました。その場合に力の大きさへ影響を与えるのは、言ってみれば「悪習慣」または「良いとはいえない作法」ではないかと思います。つまり「悪習慣を継続すればするほど、その継続期間の長さに応じて、良くない方向への影響度(インパクト)が高まってしまう」という意味です。今回の話題がそれに当るというのが、筆者の感じたことの総括でした。     (先頭に戻る)
    • その79:「 データマネジメント歩き方MAP」の利用方法を探る(1)

      少し前から、DMBOK2(データマネジメント知識体系第2版)を参考にして、データマネジメント(DM)の鳥瞰図を作成する試みとして、DM歩き方MAPの話題をこの蘭で紹介しました。この内容がEnterprise Data World 2020でのプレゼン内容の話題となるのですが、今回はその概要について改めて説明することにします。この歩き方MAPをどう利用したら良いかを、筆者が整理する目的でもあります。

      まず、整理内容の全体構成を説明します。その第1は、MAPと言っているようにDM領域(DMBOK2に基づく)の全体像を視覚的に表わすための12の知識領域と、その各領域への入力及び出力情報の関係を表現したリレーション関連図があります。この時ある領域からの出力情報は、他の領域への入力情報ともなることがあり、それにより全体領域の関係図が描かれるということになります。この図の役割は、DMを全体像として捉えた場合に、どの領域が出発点となり、それと他の領域とがどう連携したものとして考えることができるかを関連性を付けて整理できることです。但しこの関連性は、DMへの各自の取組み方針によって、順番が異なることがあり得るというのが見方のポイントになります。固定的なものではなく、参照者の都合により変化するということです。これは全体像構築のための領域優先度が変化するということであり、それが具体策を考えるロードマップ作成の上で利用できるということです。

      そして第2に、これらの各知識領域と、人的資源あるいは役割を持った関係者がどう繋がるかを整理した上で、どういう人達がどのタイミングで関わりを持つのかを認識することを行います。この目的は、先に示したDM領域に必要なリソース(または関係者)の種類を把握することです。逆に、作業に関与するスキルを備えたリソース(ビジネスまたはIT担当者)側の担当者が、自分はどういった場面で関わるべきか、あるいは関わりを持つためにはどのようなスキル分野を向上させるべきかといった点を認識することができるというのが第3の視点になります。ここではそれらの見方をサポートする要素をまとめて「関係者働き方ガイド」と呼んでおくことにします。

      更に、関与者として、どの程度のリソース量が必要になるかは、DMに関する具体的なプログラムやプロジェクトが定義される必要がありますので、その点はプログラムマネージャまたはプロジェクトマネージャとして任命された担当者が歩き方MAPを参照しながら検討することになります。そして、それに対する予算付けを承認するのが経営者/マネージャの果たす重要な役割であり、それが第4の視点といえます。いわば、リソース割当てに関しての理由付けやレビュー材料として利用するということです。当初の計画がベースラインとなり、プロジェクト進行の結果をきちんと評価し、その内容をベースラインと比較することを繰返すことで、新しいプロジェクトに対する見積りの精度向上を期待できるということになります。この辺りは通常のプロジェクトマネジメント活動と同様に扱う内容です。
    • そして、今回のDM歩き方MAP整理の特徴としていえることは、知識リポジトリの形で管理することができるようにしたことです。先に説明したように、優先度やロードマップの内容によって、DM知識領域の関係性への見方が変化するのですから、自分たちのDMプロジェクトのための地図は固定的なものではなく柔軟性をもって変更管理できるというのが望ましいはずです。これをリポジトリという形で実現できるようにしているということです。当然ながら、各領域での入力や出力情報も固定的なものではなく、自分たちの要望に応じて変更・追加を容易に行えるということになる訳です。一番のポイントはこの点にあるといって過言ではありません。
    • こういった内容を整理し、分りやすく説明しようとするのがEDW2020での、筆者の使命というべきでしょうか。今回はそれに加えて、幾つかの試みを考えています。それについては、EDW2020での実施結果報告をお楽しみに。      (先頭に戻る)

      ※ここで説明した「DM歩き方MAP」のV1.4版(最新版はV1.8)は、インフオラボレポート・サイトから無料でpdf形式で入手することができるようになっています。興味のある方は、このページの前の方にあるボタンをクリックして下さい。まだ未公開ですが、現在英語版を準備中です。

    その78: 消費税増税のスタートに当っての電子マネー決済のお試し開始

    遂に消費税の10%化が始まる時期となってしまいました。(数ヶ月前位まで消費税のアップは取止めになるとか、延期になるとか様々な憶測記事を流していたメディアが多数ありましたが、正直そういったメディア群の記事とは一体何を根拠にしたものであったのか改めて問い正してみたいものです(笑)。結局は何の責任も取らない駄文の集まり記事であったのでしょう(笑々))そういった不信感はさておき、上がるとなったものは日本国に本拠地を置く者としては、それなりの対応策を取らなければならないという気構えになってきました。今回は、こういった周辺の話題を軸に、何とはなしの感想タッチで進めたいと思います。

    これまで電子マネーについては、交通系のカードと某コンビニグループの提供するチャージカードを利用していました。後者は、とんでもないトラブルを引き起こしていたため、この機会にスマートホンでのバーコード利用形式のXXPayの利用を始めてみることにしました。そのためには、当該のXXPayに関する決済の方式と、チャージや引落しに関する仕組みを確認し、スマホアプリ導入と先の決済方法に関する紐付け設定を行うという段取りの実行を行うことになります。既に以前から開設済のネットIdと決済の銀行の紐付けなども行う事になります。そして、今回は期間限定の還元ポイント政策に則り、どのXXPayを選ぶか候補を絞って利用環境を整えました(ここで余談ですが、正直税金を上げるのに、その一部を「還元」と称してポイントにするという発想は、政治家・官僚の愚策の極みだと感じています)。

    これらの準備をして、早速某コンビニでXXPayを利用。このPay方式は、事前チャージの必要がなく使用した金額分が後でクレジットカード会社経由で引き落とされるという方式のものを使用しました。スマホでバーコードを表示して、レジ係にそれを読取って貰い、利用金額確認しレシートで再確認という手順は、他のチャージカードと手間は余り変わらずというところでした。利用後少しして利用明細がメールで送信されてくることで確認できるのは評価できます。このXXPayは、後で10月1日の消費税アップ実施開始のある時間帯にトラブルが発生していたというのをニュースで見て、自身の利用再確認をしたところです。今回の消費税アップと方式の大幅な変更(軽減税率方式というのが非常にややこしいものになっており、システム変更を含めた現場の混乱を生む元になっている。これも政治家・官僚群の愚策と言える。社会的に費やされるコストや迷惑度を全く考えていないといっても良いといって過言ではない)

    それで決済の仕組みとしてはある程度便利さを感じているものの、政府の言うポイント還元の正体がまだ腑に落ちない。そもそもそういった仕掛けを利用できる所が大変に限られているし、XXPayを使えないところもある。まるで宣伝ばかりが先に立つ、いわば「羊頭狗肉」の言葉をそのままにした仕掛けであると言いたくなる。政府のモクロミとしては、中国などのスマホ決済利用に遅れを取らずに、何とか政治宣伝に結び付けたいとい目論見の表れであると考えざるを得ない内容だと改めて感じた次第である。果たして、このような形で、このポイント還元期間を過ぎた2020年7月になっても、自分がこの仕組みを利用するだろうかと疑問を持たざるを得ない状況と考えています。言わば付け焼き刃的な仕組みの導入の方向を向いていると思われます。
  • 使い勝手に関しては、幾つかの仕組みを併用しながら、もう暫く様子を見たいと考えています。今回は、単なる不満をメインの文字にせざるを得なかったというような様子になったのが気がかりでした。
  • 【2019年10月8日、追記】使い始めて1週間以上経ちますが、筆者の準備したXXPayが使えたのは、コンビニ系列のみでした。筆者が利用した他の店舗(スーパー、飲食店他)では、そのXXPayでは利用対照にされていないとか、スマホで提示するバーコード類を読取る機器の導入がされていない等。どの電子マネーもどきがどこで使えるのかもハッキリしない有様。レジ係で対応する店員の方も困り果てているという状況です。現時点では、ヤハリ政治家や官僚の一方的な自己満足的仕組みの導入にしかなっていないのではと強く感じます。   (先頭に戻る)
  • その77: エンタープライズ・データ・ワールド (EDW) 2020 講演決定!
  • これまで何度かこのコラム記事でも紹介してきましたが、毎年米国内で開催されるベンダー独立のデータマネジメントの話題を中心としたカンファレンスがあります。今年はBostonで3/17~22の期間で実施されました。参加者は米国内に限らず、世界各地からデータの取扱いや活用方法、実践例など活発な議論が交わされ、1000人に上る参加者の集まる場所となっています。ツールベンダー主催の自社製品を利用したいるユーザカンファレンスも良く実施されますが、この会はベンダー独立を標榜して、できる限りのベンダー色や自社製品の宣伝は関係者の間で控えた形での各種プレゼンテーションが実施され、データマネジメントを中心に活発な議論が交わされます。来年は、EDW2020としてカリフォルニア州のサンディエゴ市(San Diego,CA)で3/22~27の期間で開催予定です。

    そこでこの8月に、筆者がこの蘭で紹介していた「DMBOK2データマネジメント歩き方マップ(DM Walking MAP)」の米国での紹介を意図して参加応募していたのですが、本日(9月10日)正式にプレゼンテーション実施採用連絡を受けました。数百のセッションコマに対して、その数倍に登ると言われるプレゼン応募が世界各地からあると聞いていましたが、その選定にパスして実施依頼が来たということです。筆者は、この話題について今年に入ってからかなり力を入れて整理してきたこともあり、思いの外の喜びながら、一方でシッカリとプレゼン準備をしなくてはいけないと思い直したところです。講演時間は60分、発表は当然ながら英語で実施ということになります。発表予定日時は、3月25日(水)、14:45~15:45(米国西海岸時間)です。

    話題は、先に触れた通りデータマネジメント知識体系(DMBOK)第2版の内容をベースに整理を始めた「データマネジメント歩き方マップ」です。現在Ver.1.8になっています(最新版は未公開)。このマップは、DMBOKに記述されているデータマネジメントの12の知識領域を中心に、各領域への入力情報、出力情報の関係性を元に全体の関係性を視覚化する目的で作成しているものです。単なる文章中心の説明よりも、ビジュアル表現により、DMBOKが利用し易くなることを意図しています。筆者はこれまで何度も、DMBOKを参照する上での分りやすさについて質問を受けてきました。この問いに対する筆者なりの一つの回答(ヒント)を用意したモノということです。Google Map等の地図情報が到着目的地探しに重宝されるというのと同じことです。
  • 実際には、使う人の立場により、この地図情報だけでは不十分な点もあるということを認識しているので、データマネジメント領域話題に携わる人の立場により、重点領域が変化するということがあります。そのような人の立場(役割)との紐付けを指向して、追加の資料整理を行い、それらの資料とセットで活用することが狙いです。また、知識領域間の関係の強さ、総体的な配置の重み付けなどを考慮した視覚化といったことにも、筆者は取組んでいます。少し先ですが、プレゼン実施成果の様子は、この蘭でも紹介することを考えています。是非ご期待下さい(もし、現地で直接聴講したいという方があれば、筆者宛「問合せページ」からご連絡下さい。カンファレンス参加の参加登録費の割引クーポンを、筆者から案内が可能です)
  • 尚、このDM歩き方MAP(日本語版)のver.1.4を「游悠レポートサイト(このコラムの前にあるボタンをクリック)」から無料で入手できます(最新版は改訂中でver.1.8。英語版も準備中)。是非参照下さい。     (先頭に戻る)
  • その76: AIの出力情報は「客観的」ということなのか?

    ここ数年で、AI(Artificial Intelligence)という言葉があちこちで流行言葉(或いはいわゆるバズワード)として使われるようになって数年経過してきました。多くの企業は、大きなビジネスのチャンスとして必ずといってよいほどにこの語をキーワードとして取込み宣伝しています。最近目にした話題として、「AI利用だから客観的な評価にできる」といった文句も使われるようになってきました。果たして「客観的」とはそういうことなのか気になったため、今回はこれを話題にすることにしました。

    まず「客観的」という語の意味を確認してみます。「当事者ではなく、第三者の立場から観察し、考えること、またその考え。かっかん。(デジタル大辞泉:きゃっかん(3))」「主観を離れ、誰もがそうだと納得できるような立場から物事をみるさま。(明鏡国語事典第二版:きゃっかん(2)」何れも、「判断者本人固有の見方ではなく、その外部から何らかの根拠に従い、判断・考えを受入れること」という意味合いを指したモノと筆者には受け取れます。それでは、AI(ここでは、最近良く使われる社会的に広い用語での意味合いでこの語を使います)経由で出された結果は本当に「客観的」と呼べるようなものといえるのでしょうか?

    AIの語が今のように一般的に使われる以前には、類似の概念を表わすために技術的には「データマイニング」という言葉が使われていました。現在のAIという語は、そのベースとなる技術がデータマイニングの延長として、ベースに使われる技術が大量のデータを元にした領域に移り「ディープラーニング」「機械学習」を使い出して色々な応用分野に広がりが出たところから出ていると、筆者としていうことができます。脳神経の働きを模した領域での応用と、コンピュータ処理能力の増大が下支えをしている背景があります。物事や人の傾向を見る方法としては「スコアリング」という技術の応用が主体になっているといえます。この技術により、結果を確率的に分類・判定・検出し、それを一つの判断材料として利用するということです。このスコアリング技術は、以前は主に金融系会社やクレジットカード会社の信用(与信)判断の方法として使われていました。言わば、人間が想像を逞しくして判定していた事柄を機械判定に頼ったということができます。判定する材料数が大変多くなったことも、この手法に頼った要因でもあります。

    結果を利用する立場からは、「人工知能」「人型ロボット」を想像する延長で、何らかの人のような対象からの出力(意見?)として利用するという心理が働いているものと想像できます。敢えて人のように受け取ることにより「第三者」として扱うという具合です。しかし実際には、計算またはロジックを通じた数値(または重み・スコア付け)の結果を受け取っているに過ぎないということです。つまり、これは外部からの見方というよりも、受け取る側の判断ということができるのではないか。極端に言えば、出て来た結果を「客観的な」判断として信じたいという人間側の期待と捉えることができる。
  • 筆者の結論とすれば、AI(含「まがい」)を通じて得られた結果は、「第三者的」と呼ぶのは過大評価であり、それは人間にとって、一つの判断材料である。それを利用するには人間の知恵を適用する必要がある。そしてその利用に当っては継続的な見直しを心掛けることが重要だろう、ということになります。無批判に与えられた結果を利用する姿勢は、恐らく人間の自己判断という特性を放棄することになるだろうということです。その意味で、「AIによる客観的な示唆」という謳い文句はオーバートークであると、ここでは結論付けておきます。
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  • その75: 情報の信頼性とデー タ品質に関する話題
  • 今日スマホを操作しながら、何とはなしに流れているニュース記事を見て今回のタイトルを思い付きました。そのきっかけは、ある国内の大手新聞社の海外支局員から発せたれたもので、それを日本国内向けに登録されたものです。そこでは、現地周辺の発信情報説明(というより現地で公開された情報をそのまま文面にしたものと察する)でした。ある意味日本の将来に関わる重要な話題です。最近起きた誰でも知っているはずの国際的事件ですが、内容的にセンシティブな話なので、ここでは具体的な内容には、ここでは触れないことにします。

    筆者が違和感を覚えたのは、他の複数の海外ソースから筆者が得ていた内容と正反対の情報だけであったからでした。海外特派員の記事であっても、代表的な日本の新聞社名で発する記事ならば事件の重大性から、当然内容の正確性をチェックすべきものと筆者には思われます。従って、こういう言わば垂れ流し的な記事を見てしまうと、この新聞社が普段書いている記事は、本当に信頼性があるのだろうかと疑問に思えたということです。

    目を転じると、こういったことは昨今話題になっている、ビッグデータやAI技術による「データ活用」にも関わる話となります。利用者自身でデータを扱えるツールは様々な機能や表現手段が現れ進展してきているものの、その元になるデータの質や量に関してどれだけの信頼性があるのかを、利用者が把握してデータ利用しているのだろうかという点です。この視点については、俄仕込みの技術(ツール)利用だけでは補えない部分です。データ品質に関しては、筆者が常々話題にしている「データマネジメント」領域では、当然この「データ品質」に関して当然ながら優先度の高い検討対称領域の一つとして取り扱っています。(データ品質に関してはISO/8000でも取上げられています)

    データマネジメント知識体系(DMBOK第2版)の13章で「Data Quality Management」が説明されています。そこでの定義を筆者なりに要約すると、データ品質管理とは「データ消費者のニーズに合致させ、利用状況に合うようになることを確かにするために、データへの品質管理技術を適用して、必要なアクティビティを計画し、実装し、統制を行うこと」です。どちらかといえば、データのソース源の信頼性というよりは、データそのものの利用者への安定的で安全性をもった利用環境・質を提供するという要素が強いです。

    そこで説明される、データ品質に関する判断要素(ディメンション)として、次の8項目が取上げられています。それらは、1.正確性(Accuracy)、2.完全性(Completeness)、3.一貫性(Consistency)、4.統合性(Integrity)、5.合理性(Reasonability)、6.適時性(Timeliness)、7.単一性(Uniqueness/Deduplication)、8.有効性(Validity)、です。ここでは一つ一つの内容説明には触れません。興味を持った方は、是非DMBOK2(日本語版あり)を直接参照下さい。

    これらの要素を高度に実現・維持するための技術・環境として他の知識領域(例:メタデータ管理、データガバナンス他)が位置付けられるということになります。これらの関係を鳥瞰的に捉えるための視覚的材料として、筆者の作成した「データマネジメント歩き方MAP」を利用できるというのが筆者の立場です。是非、企業における「安心・安全なデータ」「信頼性のおけるデータ」活用のために、このツールを利用して頂きたいというのが、筆者の思いです。
  • (備考)この「データマネジメント歩き方MAP」については、コラムの前にある「游悠レポートサイト」ボタンをクリックして、参照利用下さい(このMAPは、適宜更新しているため、最新版はそのレポートページで参照)。別途、英語版もあります(これについては、「お問い合せ」から連絡下さい)
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    • その74: データ活用を目指す企業人のためのお役立ち情報紹介(その2)
    • 6月10日に定例のJEMUGデータマネジメント勉強会を開催しました。3名の発表者により、話題としては次の3項目でした。「(1)データモデリング・モダナイゼーション」、「(2)データ分析者の立場から見た、必要とされるメタデータとは?」、そして筆者からの「データマネジメント歩き方MAPとデータモデリング探訪」です。最後の話題は、筆者がこの蘭で紹介しているDM歩き方MAP(Ver.1.3)を紹介しながら、データモデルとデータモデラー、データアーキテクト、データスチュワードのそれぞれの位置付けや役割について説明したものでした。

      今回説明をしながら、筆者としても「データモデリング」について改めて見直すことがありました。それは、データモデリングの必要性というのは、単に技術者同士(例えば、設計者と開発者)のための道具ではないのだという点です。恐らくITに関わる人達を想定した、世間一般ではこの部分が十分に理解されていない、或いは誤解を生じていると感じた点です。技術者同士の話題として扱ってしまうと、「技術の優位点」、「要不要論」、或いは「おたく論議」のような範囲に見えてしまう誤解という意味です。

      データモデリングの技法については幾つかの種類が存在しますが、それを一段高い上からの視点で「データモデリング」として捉えることが必要です。いわばデータマネジメントという観点です。すると技術論議を越えて、企業におけるデータの価値と、それを有効で意味のある企業資産とするための活動が必要であることが分ります(それを俯瞰したものが、筆者の話題にしているDM歩き方MAPということになるのですが)。
    • 企業のデータ資産には、どのようなものが、どこにあって、誰が責任を持っていて、どのように扱われていて、安心して使えるようにするためにどのような対策をとっている(とるべきなのか)といったようなことが、企業内の関係者にとって共通の話題として認識できるような内容を持つものだということです。そしてその中で中核的な位置付けの一つとして、データモデリングという技法と、データモデルという成果物が取上げられ、議論されるようになるべきだということです。そして、その重要点をスポンサーであるマネジメントが理解できなければならないという考え方です。

      この点において、日本の経営層には未熟さが目立つ場面が少なくないと筆者は感じます。実は経営者層に限らず、その価値を本来訴えるべき技術者側にもこういった認識が広まっておらず、それが冒頭に掲げた狭隘な見方として議論が止まる所以であるといえるでしょう。そして、これらの全体的な結果として、中長期的に見て「相当に高い金額の支出を繰返している」というのが、多くの企業のIT投資の実態ではないかと筆者は考えます。

      この投資を中長期的なものとして可能な限り抑えるために、昨今の技術やツールを活用することができます。但し、これらの技術やツールを提供するベンダー企業側にも、その提供しているものの価値や位置付けをハッキリと認識している人が多くは無い点に注意しておきたいものです。そしてこれをキチンとリードして行く知恵こそが、利用者企業に求められることです。その全体像をしっかりと把握するために、DM歩き方MAP活用の場面があります。そして、データモデリング、データモデルもこの役割を果たすための道具となり得るという点を、今回は強調しておきます。
    • 尚、DM歩き方MAPの英語版も今回作成しました。興味ある方は、「お問い合せ」コーナーから連絡下さい。    (先頭に戻る)
    • その73: データ活用を目指す企業人のためのお役立ち情報紹介(その1)
    • 前回の記事で「DMBOK2に見るデータマネジメント歩き方MAP」の紹介をしました。今回を含め数回は、それを作成しながら気付いたことを元にして文章にしたいと考えています。まず、データ活用を目指すために必要とされる人材の代表となる役割を幾つか紹介するところから始めます。日本の企業者には、この「役割」を認識することに消極的な方々もあると考えるからです。ジェネラリスト的に様々な仕事をこなすことが期待される傾向のある企業にとっては特に大切な点と考えます。但し、データ活用主義を目指す先進的な一部の組織においては必ずしもそれが当て嵌まる訳ではないことは言うまでもありません(為念)。
    • データ活用を目指すための役割の代表格は、「データアーキテクト」、「データモデラー」、「データエンジニア」そして「データスチュワード」の4つです。これらには幾つかの修飾語を付加して呼び、役割が数段細分化される傾向も海外では見ることができます。基本的な考え方としては、この4区分から始めると分りやすいと筆者は捉えています。
    • ビジネスをコンセプトレベルで考える企業人にとっては、アイデアそのものがビジネスだと強調する方もありますが、そのコンセプトを実行に移すために、特に様々なデータを利用したコンセプト実現のためには、それを技術的環境に移行して実行する役割を持つ人的資源が必要となります。このためのビジネスと技術の仲立ちの役割として「人的素材像」を紹介するのが今回の記事の目的です。
    • まず初めに紹介するのが「データモデラー」です。これは名前から想像される通り、企業の持つデータの種別やデータの構造的な位置付けを視覚的に捉えることを可能にするための活動を主体にします。ここでのポイントは「視覚的に」ということと、「意味の正確さ」ということになるでしょう。このデータモデラーは、論理的(ビジネス寄り)と物理的(IT技術寄り)の立場に、実際は分類されることになります。論理的な場面では、ビジネスの企画者や現場に関わる人達と連携をする重要な役割です。物理的な場面では、ITアプリケーションの開発者と密接な関わりを持つでしょう。
    • 次に紹介したいのが、「データアーキテクト」です。データモデラーとも関わりを持ちますが、データアーキテクトの視点はもう少し幅が広く、一段高い視点での活動が要求されるというのがポイントでしょう。必要とされるデータを、どういう(複数の)経路で入手し、その整合性を高めるのにどうすれば良いかを考えます。そしてそれを実現可能にするためにIT技術者の力を借りることになります。また、データの利用者の使いやすい環境の設計にも関わることになります。
    • 三番目が「データエンジニア」です。これはデータサーエンスやデータマイニングの言葉が広がってくると共に表現されるようになってきた、比較的新しい役割です。データが入手できて、それをビジネス上の目標・成果達成のために利用するには、活用のためのデータ形式や業務プロセスの連携が取れるようにする必要があります。このためにデータを加工したり、品質の高い形に整理し眺めることができるようにする必要性があります。このために、データの取扱いや技術的な課題への対応力をもったエンジニアが求められるということです。
    • そして、最後に紹介するのが「データスチュワード」です。データマネジメントの考え方が認知されると共に、この役割を指す言葉が知られるようになってきました。実際にはこの一語だけでこの役割を表わしきることはできす、最近はさらに「ビジネス」、「コーディネート」、「エグゼクティブ」、「チーフ」などの様々な修飾語を付加して呼び表わし、その役割の多様性が出てくるようになりました。実質的な役割としては、企業におけるデータの実質的な品質の維持管理を可能にするための活動に携わる人々ということになるでしょう。場合によって「データの門番」ということができます。その活動の円滑さ維持のために、企業内の様々な人達とのコミニュケーションを大切にする必要があります。
    • これらの役割が必要となる場面理解のために、先に公開した「データマネジメント歩き方マップ」を利用することができます。それは、人的資源確保、データマネジメントの活動予算化を目的に経営陣からの理解を得るという意味で、重要なことです。筆者は次回以降、今回の議論を広める考え方を紹介したいと考えています。     (先頭に戻る)
    • その72: Damaデータマネジメント知識体系#2(DMBOK2) データマネジメント歩き方MAP(V1.2)公開
    • データマネジメントに関する知識体系としてDMBOK2が出版され、日本Dama支部日本語翻訳版もアマゾン等で手にいれることができます。これは所謂知識体系(データマネジメント(DM)領域への入門+)といったものですが、この本を手に入れて読んでみただけでは、特に初読者には何のことか直ぐには頭に入ってくるという訳には行きません。ここで書かれていることを実践しようとするには、書かれている諸領域に関する内容を更に深掘り作業する必要があり、中々門の奥に入ることが簡単ではないというのが、専門家を除く正直な感想なのではないでしょうか。
    • こういった読者も想定して、今回DMBOK2の主知識領域として紹介されている11領域の入力および出力情報に目を向けて、全体観としての「DMBOK2データマネジメント世界の歩き方MAP」を作成しました。DMとして期待されている全体像を把握する一つの議論資料として役立てて頂けると、筆者としても有り難い限りです。興味のある方は、このコラムの前にある「游悠レポートサイト」ボタンをクリックして、是非ダウンロードして下さい(今回は文字が小さいですがA4版を提供)。(追記:更に「データサイエンス」知識領域を加え、図式配置を見直して、V1.2として改訂しました)
    • この歩き方MAPの一つの利用方法としては、知識領域における入力と出力情報の関係を全体的なDM視点で追い掛けることができるということです。また二つ目には、各知識領域の関係性を知ることができるということです。DMBOK2では、データガバナンス領域を中心に置いて、それを囲む項目として、知識領域群を配置しています。しかしそれらの知識領域は必ずしも同列の項目として理解すれば良いという訳ではなく、いわば配置の順列や関係性といった重みを考慮した方が分りやすいという内容です。この目的のために、DM歩き方MAPが大変参考にできるだろうということです。
    • ここでは、二次元的な情報の関連図(グラフ図)として表現したものを公開しましたが、この元となる図版は、実はもっと立体的な構造として、筆者は表現管理しています。各知識エリア項目などに関する関連情報を関連付けて、比較的簡単にDM知識リポジトリとして管理利用している訳です。これは「データに関するデータ」つまり「メタデータ」的な発想を取入れて管理利用しているということです。これに関する詳細はここでは触れませんが、この考え方に興味のある方は筆者宛問い合せ下さい。また、前回で紹介したようにDama Japanの開催する分科会で筆者と顔を合わせることができますので、そちらで話題とすることもできます。筆者は主に、第9分科会(DMBOK2勉強会)、第11分科会(CMMMI/DMM研究会)に出没しています。それらの詳細はDama JapanのWebページで紹介されていますので確認下さい(こちら)。
    • 今回の図表現のような形式を利用することで、文字だけからでは良く見えなかった「情報の関係性」を目に見えることができるようにできますし、また共通の議論を深める材料とすることもできます。これらは情報の「ビジュアライゼーション」とい領域に属する話題でもあります。筆者としては、これからも色々な視点でのデータ管理関連情報発信を目指します。過去にも記述したデータモデリングの価値は、そういった面での効果を期待できる領域ということができます。今回は、この辺りで切り上げることにします。    (先頭に戻る)
    • 【4月19日追記】「データサイエンス」知識領域を加え、V1.1として改訂しました。
      【4月21日追記】更に、図式の配置見直しを行い、V1.2として改訂しました。
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    • その71: データマネジメント成熟度評価、CMMI版の概要紹介
    • 既に何度かデータマネジメントの成熟度評価の話題に触れてきました。今回は、CMMIにより提供されている成熟度評価の構成の概要について紹介します。CMMI/DMMは、米国カーネギーメロン大学のソフトウェアエンジニアリング研究所(SEI)の開発した 「ケイパビリティの成熟度5段階評価」のデータマネジメント領域に関するモデルです。CMMIのケイパビリティ成熟度モデルに関する説明は、次のようなWebサイトで紹介されているので興味のある方は参照下さい(こちら)。
    • さて、CMMI/DMMモデルは、5つのデータマネジメントに関する主要領域と1つの共通サポート領域、合計6領域で構成しています。その5つの領域とは、(1)データマネジメント方略、(2)データガバナンス、(3)データ品質、(4)プラットフォームとアーキテクチャ、(5)データオペレーションの5つでデータを利用するための戦略から基盤の運用といった部分までを一通りアセスメントの対象にするものです。そして、これらが効果的に運営されるための基本的なアクティビティの考え方として、(6)サポートプロセスの中で5つのサブプロセスを取上げています。先の5領域(カテゴリ)の中に、1段階具体化したものとして20のプロセスエリアが配分されています。各プロセスエリアごとにアセスメントのための評価項目を設定し、最大合計25のプロセスエリア評価を通じて、「段階1~5」の最終レベル評価を行うといった具合です。
    • これらの25プロセスエリアを全て必ずアセスメントしなければならないということではなく、評価を行いたいと考えている組織のニーズに合わせて、評価者が事前に幾つか選択してからアセスメントを実施するという方法も考えることができます。着目している特定の1プロセスエリアだけを評価することを考えることも可能です。筆者の考えとしては、(6)サポートプロセス評価は一緒に実施すると考えた方が良いのではないかと思います。基本的な組織的運営管理の考え方を含んでいるということからです。
    • アセスメントを実施した場合の結果は、基本的に自組織における現状把握という位置付けになりますが、成熟度の考え方を利用して目標としたい段階を設定して、その項目(プロセスエリア)での目標と現状の差として捉え、次なる目標への段階的な改善・向上を組織的に考えて行くことになります。CMMI/DMMの中ではこの差を埋めるための具体的な手段が提供されている訳ではありません。但し、アセスメントの判断項目として状態が記述されているので、その状態へ辿り着くために具体的にどのような方法やツールを活用するかを各企業ごとに考え実行するということです。このための検討材料として、例えば以前紹介したことのある知識体系書(DMBOK(第2版))等を参考にすることができます。
    • このCMMI/DMMは、有償でCMMIのWebサイトから入手することができます(英文)。また、筆者の参加しているDAMA日本支部の中の第11分科会では、ほぼ月1回の割で勉強会を継続しているので、興味が沸いた方は、参加を検討下さい(DAMA日本支部サイト)。
    • この20+5のプロセスエリアは、アセスメント実施に当っては独立した要素として考える前提です。実際にはプロセスエリア同士にある程度の関係性があることも事実でしょう。この関係するプロセスエリアについてはCMMI/DMMの中にも触れられています。近々このプロセスエリア間の関係性に関して、游悠レポートとして紹介したいと考えています。
    • 2019年3月23日追記: 上記のプロセスエリア群の関連性について整理した概要版を、「游悠レポートサイト」に登録しました。是非参照下さい(コラム先頭の上にある「游悠レポートサイト」ボタンから辿れます)。     (先頭に戻る)
    • その70: JEMUG勉強会(2019年2月 18日)の話題紹介
    • このページでしばしば紹介していますが、2月18日にJEMUG(日本エンタープライズデータモデルユーザ会)定例勉強会が開かれ、筆者も参加したためその時の話題について簡単に紹介します。

      今回の話題は2点。一つ目はデータモデリングコンテスト2018へ応募された参加モデルに関する評価審査を兼ねたディスカッション。二つ目は米国を中心に最近議論されることのある「Data Swamp(データ沼池)」に関するものでした。コンテストの題目はビットコイン(BTC)の基本環境に関する話題でした。ビットコインにおけるトランザクション(取引)とその基盤の一つとして話題とされるブロックチェーンの概念を論理モデルで記述するというのが課題。この内容については詳述しませんが、モデルについて興味のある方は、游悠レポートサイトに筆者の作成したモデルを掲載しますので参照下さい(実際の応募モデルを、勉強会の議論を参考に改訂したものとします)。

      二つ目の話題として議論された「データ沼池」というのは、最近良く耳にする機会が増えた「データレイク(データ湖)」を元にした概念として取上げられるものです。データレイクは、様々なデータソースをデータ入力とする考え方ですが、以前に使われていたデータウェアハウスよりも更に様々なデータ構造が入力として対象として広がっているという点で拡大された概念です。ここでは、例えばIoTと連携して使われるセンサーデータやソーシャルデータ(テキストデータ)などが含まれます。

      データ沼池というのは、データレイクに対するデータマネジメントを適切に行わないと、データレイク利用者の中には取扱い状況が生まれ得るという考えからきています。つまり澄んだ湖が、濁りを含んだ沼池になってしまうという連想からきた言葉であるということができます。データ利用者にとってのデータ品質やメタデータ管理の話題とも係わる問題ともいえます。また過度のガバナンスルールを適用しても利用者にとって窮屈な状況が生まれるという議論が含まれます。これらの問題は、データ活用環境を構築した上での次の段階として改めて認識された課題として捉えることができるでしょう。残念ながら、日本の多くの利用者にとっては、この議論に辿り着く前の一週遅れの段階にまだ止まっているというのが、現在の筆者の認識です。
    • このデータ沼池の状態を上手く澄んだ湖の状態としするためには、これまで何度か触れてきた「データマネジメント」に関する地道な努力の継続重要性を持っているといえます。このために有用なツール活用も効果的です。但し誤解をしてはいけないのは、ツール導入が目的になっているのではなく、確かな方針とプロセスの下にツール利用があるという点であることを忘れてはならないということです。今回はキーワードの紹介迄ということにします。    (先頭に戻る)
    • その69: データサイエンティスト育成などに関する話題
    • ビッグデータやIoTという用語での領域が国内でのビジネス話題として取上げられるようになって10年近く経ちますが、いわゆるバズワード扱いから大分様子が変わってきたように思われます。関連する技術者育成の必要性を感じる中堅企業も増えてきており、そういった点での具体的相談も筆者の周りで聞こえるようになってきました。今回はその周辺で必要とされてきているデータサイエンティスト(DS)、およびデータエンジニア(DE)に必要とされるスキルについて、IPA(情報処理推進機構)やデータサイエンティスト協会の提供しているスキル情報を話題にしながら考えます。
    • データサイエンティスト協会は、2013年に一般社団法人として設立されたベンダーやユーザ企業が会員の団体です(こちら)。ビジネス、データサイエンス、データエンジニアリングをスキル領域の柱としてスキルチェックリスト第2版を2017年版として公開しています。その内容を見るとビジネス領域100項目、DS領域228項目、DE関連領域129項目、合計457項目と多岐に渡った物になっています。それを7段階レベル(実質3段階)のステップとしてスキル育成を考えられるようにした力作となっています。この内容を元に、要約したスキル項目数表を作成しましたので、興味のある方は筆者の「游悠レポートサイト」を参照下さい。(冒頭ボタンをクリック)
    • このスキルチェックリストを見て気が付いた点を幾つか上げてみます。まずビジネス力領域に、プロジェクトプロセスと活動マネジメントが含まれている点。これは以前筆者がこの欄で記述しましたが、データサイエンス活動は様々なデータを駆使した「実験や開発(R&D)」であるということです。従ってその活動のプロセス自体をきちんと管理できるようにする必要があるということです。つまり、放っておくと際限なしに費用も時間も掛かる領域であるということ。そういう意味でこれが一番大切なスキルであるといえます。
    • 第2点として、DSやDEの専門的スキルが広い範囲(領域と深さ)に渡るため、当初の目的を定めた上で技術者育成を図る必要があるということです。目的に沿った領域に関係するスキルから段階的にスキル育成を始めること。このチェックリストでの説明にもありますが、全てを一律に修得を目指すのではなく、選択的な考え方が必要ということです。但し、基本になる考え方は浅く広く持っていた方が視野の広がりを支える上で大切なことでしょう。この辺りのバランスが要求されます。
    • 第3として、データサイエンティストというのは属人的なものですが、データサイエンス活動はグループ活動であるという点。様々なスキルを備えた人達の能力を集めてビジネス成果に繋げるものだということです。従って、最近はDEスキルを強化した「データエンジニア」という言葉(役割)が出て来ていることに繋がっています。
    • この3つのポイントを押えながら、自分の企業目標にあった技術者およびスキル育成の方向性を探るということが、今後必要とされるのではないでしょうか。 改めて心に留めておきたい ものです。    (先頭に戻る)
    その68: ビットコイン(BTC)とブロックチェーン方式によるトランザクション(取引)の考え方
  • 前回は(顧客)マスタデータ管理の不十分さから生まれた現実の不具合発生の例について体験談を記述しました。今回は注目されているビットコインという取引状況データとマスタデータの位置付けについて、筆者が現時点理解している内容について少し触れたいと考えます。

    ビットコインにおけるトランザクションというのは、何らかの価値(数字)の移動表現管理と、ブロックチェーン技術を利用した価値移動の単一性保証を目指したアプリケーション分野であると、筆者は現在理解しています。そこでは「金貨」や「紙幣」のように匿名性の維持を特徴としている。しかし「金貨」や「紙幣」の場合にはその価値管理の中には所有者と紐付く情報は存在せず、現時点で自分がその所有者だと宣言した人物(保有者)がその使用権限があるという形です。一方ビットコインでは暗号化技術を利用するために、所有者の暗号鍵と関連付けられるという特徴があると見えます。もう少し正確にいうと「所有者として宣言した者(公開鍵暗号ペアを取り扱うことができる者)」ということです。「取引所」というのは、その権利の代理者という位置付けです。

    また両者の差異の第2の特徴として、ビットコインではそれまでに経てきた取引の塊をコイン価値そのものとして記載管理するが、「金貨」や「紙幣」はどういう経路で使われてきたかという記憶は関係付けられないという点があります。これは手に保持することができる現物であるという点から来ているといえるでしょう。しかしその現物管理が銀行の口座に蓄えられた数値という形になった時点で先の「金貨」などの特性が失われていることが分かります(逆に特徴が付与されているという表現も可能)。従って現実のモノと結び付けられる「コイン」という概念よりは、「電子的に実現されたバリュー(EV)」という方が実態に近いでしょう。こうして電子的に生まれる価値(数値)であるからこそ、ネットワークを通じてすぐに国境を越えた価値の取引をすることがでるという仕組みです。
  • 先に記述したように、ビットコインでは現在の所有者(権利者)による暗号鍵を利用した承認手続きが必要であるということから、その暗号鍵の発行管理が必要であるということがいえます。この意味でビットコインを用いた取引には何らかの仕組みによる参加者の管理マスタが必要になるという流れでしょう。このマスタ管理がしっかりと行えるかどうかが、仕組みの信頼性への鍵ともなる訳です。この辺りの仕組みについては、まだ筆者には把握できていないため、今後のデータマネジメント領域に関連した話題として、今後の筆者自身への今年の課題に取上げておくことにしたいと考えています。

    因みにビットコインの話が、今年のJEMUGのデータモデリングコンテスト課題になっていますので、興味ある方は是非参加検討下さい。
     =>  こちら
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  • その67: マスタデータ管理の不十分さから生まれる課題・・・体験談
  • マスタデータをうまく管理してゆくことの重要性については、この欄でも何度か触れてきましたが、今回は筆者が最近体験した内容を元に例として記述しておきたいと思います。一般に提供されているシステムを利用した上での実体験のため、ここで敢えてサービス名称を伏せることはしません。当該関係企業の業務改善に役立てられることを期待します。
  • 交通ICカードの利用は今や当たり前のことになっています。このICカード利用を促す上で様々な顧客サービス機能(アプリケーション)が段階的に開発され、次々と機能を拡大するために新しいアプリが提供されているというのが実際の状況だと考えられます。筆者が問題を感じたのはモバイルSuicaを利用登録しての体験です。このモバイルSuica利用では企業により自動的に付与されたIDというものがあるようです。このIDは何らかのタイミングで電子メールにより利用者に連絡をしたもののようです。不覚にも筆者は、このID通知を認識していないという状況でした。
  • Suicaを利用すると交通の利用履歴情報を参照できるようになるのと同時に、ポイントサービスが提供され、案外便利に利用できます。しかし問題が起きたのは、このポイントサービスが新しい仕組み(システム)を導入するところでした。新サービスへの移行のために、この会社がこれまでに発行してきた何種類(恐らく5~6種類あると思われる)かのシステムへ登録することを要求してきた複数の利用者IDを一つに統合する試みをしたことから生まれた課題のように思われます。
  • 筆者もこの新しいサービスへの移行を試みたところ、これまで同社の他サービス群へ利用登録したIDを全て利用者が紐付け作業しないといけない仕組みになっていました。かなり面倒だと感じながらこの操作を実施しようとしたのですが、そこで筆者はモバイルSuicaの利用IDを認識していないことに気付きこれを確認しようとしました。この会社が提供するWebサイトの案内に従い、筆者の利用するメールアドレスや電話番号、Suica番号など必要と記述されている情報を提示しました。ところがサービスセンターから返ってきた回答は、提示された内容だけでは当該IDを確認できないため、更に追加情報を提示して欲しいというもの。
  • そこで更に要求された情報を提示したものの、返ってきたのはやはりIDを見つけられないという回答。一方で移行しようとしている新しいサービスシステムへの利用登録を試みると旧の利用IDを利用廃棄(退会手続き)しないとそれ以上は奨めないという始末。つまり旧システムサービスと新サービス利用の間で、筆者の利用IDがデッドロック(板挟み)状態になり、その先に進めないという話になっている訳です。しかもその解決策として期待した唯一の策である顧客サービスデスクへの問合せが役に立たない。
  • 進退窮まるというのはこういう状態を指すのでしょう(笑)。これは所謂顧客マスタ管理に属する問題だと筆者には思える。その解決策をサービス企業側が用意できていないと感じています。ちなみにWebページで解決策を探ろうとしてもありこちのページをグルグルとループしたように繰返し見せられるだけで、全く何の解決策提供になっていません(苦笑)。
  • この事象について現時点解決策を見いだせていませんが、今後解決した際には、再びこの欄でお知らせしたいと考えています。
  • 【1月6日補足】3度のメールでの往復を繰り返して、やっとID名回答を確認することができましたが。筆者にとっても、この会社の問い合せ担当者にとっても不満が残る流れとなったように思われます。システムから返答されるエラーの意味が分かりにくい上に、複数のIDの連携処理を利用者に強要するようなオペレーションを平気で行う(筆者にはそう感じられた)会社では、顧客満足という言葉をどう捉えているのか聞いてみたいと正直思いました。この件はこれで終わります。    (先頭に戻る)