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【所長の視点】
その162: 仮想グラフ・アプローチの話題について(その1)
ここのところ、この欄ではオントロジー及びその実現・応用の領域である知識グラフ(KG:Knowledge Graph)、更にAIに関連する話題に触れてきました。このKGに関する実装は、物理的に分析データのソースとなるシステム(いわゆるデータウェアハウス、データレイクのような蓄積データ)から必要データを既存とは別なアーキテクチャを構成するシステムの上に抜き出して利用するというのが主流でした。一方で近頃は「仮想(ヴァーチャル)グラフというアーキテクチャが出現しつつあります。今回は、この技術についての考察を行っている資料(注1)を参考に、筆者としての議論を進めたいと考えます。
Databricks、SnowflakeのようなData Warehouse(DWH)、Data Lakeを標榜するベンダーが、グラフデータ構造の環境をソース寄り側に置こうとするアーキテクチャ(仮想グラフ構想)を進めようとする方針は理解できます。それは、自アーキテクチャ環境に取り込んだデータを外に引き渡してしまい、DWH、DataLake環境のリソース継続的拡大(投資)を可能な限り引き留めたいという期待に基づくものとして位置づけられるという点です。そのために、データを移動する余分なETLプロセスを増やさないで済むというロジックを強調することも自然な流れと云えます。但し、実際の活用場面を考える場合、筆者としては、この考え方に幾つかの考慮・疑問点を持っています。
1. 既存のリレーショナルDB設計/実装構造のままで、期待するグラフデータ分析利用の目的に合った処理が(物理的な加工なしに)有効にできることはすぐに実現しそうにない点。テスト、POC的利用の範囲では可能かもしれないが。性能要件を含めた本格的利用にあたっっては、結局DWH/Data Lake環境の側に相応のリソース投資を行う必要が出るだろうと想定されるということ。或いはグラフ分析用に既存のDBデータを事前加工する必要も出ると考えられる(これは、DWH単体でなく結局はデータマートのような加工DB環境を作らざるを得ないという現実の実装例に見ることができる。また、以前から議論されているデータフェデレーション構想が、期待されたほど有効性を持って浸透していない理由に似ている)。但し、実際的で画期的なアーキテクチャ変化が実現されれば話が変わる可能性が出る。これは必要な投資コストとの見合いとも関係する。このような環境がすぐ実現されるには、技術と時間を必要とすると考える点。
2. これはグラフ分析能力をどう使いたいのかにも依存する、データ活用構想作りに向けた課題と云える。実は、ただ一つの正解がある訳ではないという点。基本的にグラフ分析のための構造とリレーショナル構造によるDB構築は、双方の利用者の目的を100%満たす相互補完性があるとは云えないといえる。これは、オントロジー的発想とリレーショナル設計発想の設計差異を考えてみて気付く点である。但し簡単な検索/分析の範囲であれば、ある程度の相互利用性はあると考えられる。利用者にとって、目的と合わせて全体的なデータアーキテクチャを構想する能力が問われる部分ということである。やや言い過ぎかもしれないが、この整理を利用者側がベンダー技術任せに放り投げることは、自分のデータマネジメント能力を放棄していることに等しいことを認識する必要があると考える。単なるIT技術利用の話ではないことを忘れてはならない。
一方で現時点、実用的なグラフデータベースの提供ベンダーである「Neo4j」社が仮想グラフ利用に関して挑戦をすると発表している点、今後どのような内容を構想/提案/実現しようとしてくるのか着目しておきたい点です。また、今回の資料で昨今話題となっているAI利用技術の一つである「RAG」と「Graph
RAG」との違いについて簡潔に、分かり易く説明されている点、この領域話題に興味ある方は、是非とも参考にして頂きたい所です。今回の参考資料は、グラフデータ活用に関する全3部作での解説資料となっており、第2部、3部についても、今後触れたいと考えています。
注1 https://zenn.dev/yohei/articles/2026-05-30-vkg-strategy-what (3部作の第1部)
Snowflake / Databricks / Google が挑む仮想グラフ戦略 Yohei Onishi 氏による(2026年6月27日時点)
次回のテーマ予定:
「データを活用したモノ・コトの可視化」が意味すること
これまでのメッセージ --> こちら
新着情報(本年分)
- 2026年6月28日
- メッセージNo.162を掲載しました。 (New)
- 2026年3月30日
- メッセージNo.161を掲載しました。
- 2026年2月9日
- メッセージNo.160を掲載しました。
- 2026年1月29日
- 游悠レポート 202601 を登録しました。IOF SCM Ontology 202502
- 2026年1月1日
- メッセージNo.159を掲載しました。
- 2026年1月1日
- 【新年のご挨拶】謹賀新年、2026。関係者の皆様、本年も宜しくお願い致します。
