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【所長の視点】
その147: グラフ・データベース利用を考察する(3)
現在のグラフ・データベースの利用場面を大別すると3種類位に分類できるようです。1つ目はトリプル(三つ組み)を格納する入れ物としての利用。2つ目は、オントロジー構築中心の構造管理を主目的とした使い方。3つめは知識データベースとしての利用を目的とする知識グラフといった方向です。それぞれの特徴と注意点に関する考察を記述します。
1つ目のトリプル格納バケツとしての代表格は、所謂リンクト・オープンデータ(LOD)の取込みを目的としたものです。コレは広範囲な全体構造を把握・管理するよりは、外部で公開されたデータとの情報的拡張・接続性を主な期待値として利用するものと考えられます。ここでは基本的にはインスタンスの集合という形態であり、データの拡張利用においては語彙の一致性が鍵になると云えます。但し語彙というモノは、同じ名称を使っていても意味合いが異なるという「同名意義」、また異なる語彙であっても実は同じ意味を表しているという「異語同義性」といった現象を表すことが頻繁にあり、正確性の揺らぎを生じる傾向があります。その上で三つ組みレベルの集合という点が、対象データの急激な増加を生むという現象に繋がります。異なった言語で表現されたトリプルを結合する場合、更にこの三つ組み集合の表す結果の正確性/品質が問題となる訳です。この点を許容する範囲で納める結合の工夫が重要性を持ちます。
2つ目の活用方向は、オントロジー構築の基盤としての利用です。1つめの利用との関連としては、三つ組みの単なる大規模集合に意味の基礎を与えるという役割と云えます(これはボトムアップ的アプローチということになり、手間も掛かるものになるでしょう)。一方データで表したい意味構造を概念レベルから設計するという方向もあり、これはトップダウン的アプローチという正攻法です。このオントロジー構築の過程で、所謂マスタデータの設計と、その構成コード体系具体化という意味でマスタに属するインスタンス群の生成という流れが生まれるでしょう。こうして構築されたオントロジー構造が意味メタデータとして位置づけられ、品質を伴ったグラフデータが生まれることになります。この手法でビッグデータの機械学習連携が精度を向上するという効果を生むでしょう。
3つ目の方向は知識グラフの構築基盤という事ですが、この有効利用においては、2つめのオントロジー構築に加えてグラフデータベースを元にした推論規則構築の仕方と、これを用いた探索言語の整備という点が重要性を持ちます。これに関しては既に様々な試みが行われている状況ですが、基本的には対象領域(例えば、製造、金融、物流管理など)に特化した構築方法が主体になるでしょう。大域的な基本構造と、それを利用する個別プロセスの場面依存という課題があるためです。こうなると、探索された知識を反映して知識グラフにフィードバックするという方向の技術が、更に意味をもつことになるでしょう。
この分野においては、機械学/AI技術の連携として、現在LLM(Large Language Model;大規模言語モデル)やRAG(Retrieval Augmented Generation)技術の連携利用が試みられていますが、筆者の理解ではまだ実証実験段階であるように捉えられます。
(備考) グラフ技術に関連する話題は、これまで游悠レポート資料の中で扱っているため、興味ある方は参照下さい。
次回のテーマ予定:
「データを活用したモノ・コトの可視化」が意味すること
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新着情報(本年分)
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- 2024年8月30日
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- 游悠レポート2024-01 資料を登録しました 「オントロジー視点とデータモデルの課題」
- 2024年6月19日
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- 2024年1月1日
- 【新年のご挨拶】2024年、新年明けましておめでとうございます。激動の予見される新年を迎えるに当たり、一言のご挨拶を申し上げます。昨年は事前の予想以上に様々な社会的変動を見せた年となりました。当Webサイトを運営する所長の立場としても、居を本格的に移し、新たな活動拠点の足場を構える年となりました。2024年というこの年は、世界的な変動の実現をこれまで以上に予感させることになりそうです。
所長の立場としては、昨年以上に「ローカル&ユニバーサル視点に立つ」という思いで歩みを進めることを年頭の思いと致します。今年のテーマは「意識の役割とは何か?」です。これまで、またこれからにおいてもご縁のある関係の皆様方と次の一年を過ごしてゆくことに致します。引き続き宜しくお願い申し上げます。